運命の人
山崎 豊子 : 著
文芸春秋 : 発行
山崎豊子と言えば、長編小説。
『白い巨塔』『華麗なる一族』『不毛地帯』『沈まぬ太陽』など、この人の作品の底知れぬエネルギーは好奇心から?それとも、使命感でしょうか?
昭和46年から47年にかけた沖縄返還とその密約のスクープを巡るこの小説は4巻仕立てで、
作者(1924年生まれ)85才の作品です。
主人公は、某新聞社政治部記者の弓成亮太。
外務省事務官、三木昭子から受け取った「秘密文書」の粗漏な扱いから、
ニュースソースが暴かれ、政府・司法とマスメディアまで巻き込んだ大問題に発展します。
各巻頭に、
「この作品は、事実を取材し、小説的に構築したフィクションである」とある様に、
実際に西山事件 という実話が基になっています。
毎日新聞 の 記者が沖縄返還にまつわる政府の機密文書を、 女性事務官からを入手しスクープした事件ですが、
”情を通じて”と言う、その方法が問題になってややこしい裁判になった話です。
当時の政治家がほとんど実名に近い仮名で描かれ、事情のわかる人にはかなり面白いでしょう。
「私はいつも、ただよい小説を書こうとしているだけです。そのための時間と労は惜しみません。私は文字通り四六時中、小説のことだけを考えています。大きな構想のもとに、出来る限りの取材をし、事実を掘り下げる。しかし、取材で得た事実を羅列しただけでは小説にはなりません。テーマをどう構成し、人間ドラマを形作って行くか、考えに考え抜き、ディテールにもこだわります。
そうしてこそ作品に厚みが出て、真実というものが表現できるのではないでしょうか」
↑ そのように言われる山崎さんですが、
確かに、
1971年佐藤栄作政権のもと 日米間では、沖縄返還協定を結ぶために
「アメリカが地権者に支払う土地現状復旧費用400万ドル
(時価で約12億円)を日本政府がアメリカに秘密裏に支払う」とあったらしい密約の暴露と、
返還前の沖縄での日本とアメリカの関係の屈辱的な悲惨さを、事実として教わりました。
by kosuzume2
| 2010-02-22 15:12
| 本