麻酔科医
江川 晴 : 著
小学館 : 発行 (2008年初版)
著者は、元看護士で、1924年生まれの現在85歳(?)の女性。 2年前の初版発行ですから、83歳の時の作品です。
不遜ですが、正直な感想を言ってしまいますと、
文章と筋の運びに、
これも小説ですか?と思いました。
起承転結が曖昧で、転がないまま・・・、エッセイとか短編集とも少し違います。
それでも、多くの人にお勧めしたい本でした。
⇓ 本の帯です。文字の読みにくさはごめんなさいですが、内容の核心です。
ほとんどが痛み止めが目的で、頚椎と頭部に8本の麻酔・・・
腰椎には、硬膜外麻酔は10回を越えますし、神経根に直接の麻酔は3回かなぁ~~
血管造営も脳から脚まで・・・あちこち。
大体は整形外科の医師の手で、ですから麻酔科の出番は手術の時がたなのでしょうか?
読みながら、色々な事を知ったり驚いたりしましたが、印象的なのは、
★元気な患者さんを手術する為に、麻酔薬を使って眠らせてしまう。この時は呼吸も止まりますので、手術中は人工呼
吸器を使います(文中から)
意識のある人の筋肉は硬くてメスが入らないそうです。
筋弛緩剤で弛緩させての施術になりますが、そのときは呼吸も止まるそうです。
★麻酔科医は、麻酔をかけられた患者さんの保護者だ、なぜなら、その時、患者さんは完全に無抵抗だから(文中から)
患部に集中している執刀医に対し、手術中の患者を守るために細心の注意を怠らないのが麻酔科医の役目。
術後は集中治療室での回復まできちんと見守り完全復帰までの責任も負うという大変な仕事内容。
華やかな外科の執刀医に比べて、「縁の下の力持ち』な麻酔医・・・想像以上に大切な存在でした。
さすが看護師さんと著者に感じたのは、主人公神山慧太の80歳になる祖母の言葉・・・
九州で、認知症のグループホームを経営している、元看護婦の彼女を借りて、、
現在の介護が置かれている状況がきっちりと語られ、
慧太や介護士を辞めたいという若い子を励まし説得します。
介護問題は、今回は省いて・・・落ち込む孫:慧太への言葉、長いですが転写します。
麻酔科医は、麻酔をかけられた患者さんの保護者たい。なぜなら、そのとき、患者さんは完全に無抵抗ですたい。麻酔科医は眠っている患者に代わって呼吸をし、体の変調をいち早く術者に訴えるのが、責任たい。麻酔科医が、例えば、患者の状態が危機的状況にあると判断し、執刀医に手術中止を訴えるとする。それはもう麻酔科医の声ではなく、患者の命の叫びたい。
そこで執刀医に笑われ、屈辱を感じるようでは、まだまだ本ものの医者とはいえんとよ。それは患者の命より自分が可愛い証拠たい
小説というには、ヤマ場もなく、ドラマティックでもないまま・・・中途半端な感じがしますが、心にしみるいい本でした。
知人のお嬢さんや夫の友人にも麻酔科医さんがありますが、機会があったらこの本の感想など伺ってみたいです。
by kosuzume2
| 2010-03-20 00:00
| 本