遺骨(内田康夫) / 詩城の旅びと(松本清張)
内田康夫 : 著
角川書店 : 発行 (平成9年)
お馴染の浅見光彦シリーズ・・・何作目かはちょっと不明ですが、
淡路島と山口県の長門市を主な舞台に書かれています。
淡路島へのフェリーで出会い、お寺でも見かけた男が殺された。
家族も知らない納骨に来たらしい。
ある筈のない遺骨を引き取りに、複数の人物が寺にやってくる。
詩人の≪金子みすず≫の取材を兼ねて出掛けた被害者の故郷:山口県仙崎で、
被害者をめぐる人間関係をたどるうちに、光彦は医学界を脅かす驚愕の真相に気付きはじめ・・・
脳死と臓器移植の問題が論議されていた頃の作品ですが、
浅見家の考え方は、私と同じ考えで、魅力を感じました。
光彦の
僕は潔く死にますね。(中略)もし僕が臓器移植を必要とするような難病に罹っ
たとしても、絶対に手術はしないでください。
まして他人の脳死を待つような真似はとんでもない話です
と、いう発言に一家が賛同する場面。
今回の事件の根源は、戦時中のおどろおどろしい731部隊。
中国での人体実験ですが、日本国内でもあったのかもしれません。本当に怖いことですが、戦争と言う非常事態ではそんな考えも正当化されたのでしょうか?
松本清張 : 著
日本放送出版協会 : 発行 (平成元年)
某新聞社の企画部宛に届いた1通の投書から始まる物語・・・
28歳のOLが『国際駅伝競走』の開催地を、伝統の国内から海外に移す提案は、
南フランスのプロバンス地方、マルセイユ~アヴィニョン~アルル のコースを手描きの地図同封で届けられた。
投書の主・多島通子の思惑と秘密・・・画壇の暗闇・・・・スポーツの世界の魑魅魍魎。
画になる風景の中でのスリリングなストーリイ展開は、1989年にテレビドラマになっています。(観ていません)
南仏の風景にも憧れますが、
日本でもよく似た景色があるようで、いつかそちらに行ってみたい。
それは、アーチ型の水道橋で、 →
九州・大分県竹田市にある≪明正井路一号幹線一号橋(めいせいいろいちごうかんせんいちごうきょう)≫。2002年に土木学会選奨土木遺産に選定されているようですが、小説の中で確かアヴィニョン近くのアーチ型水道橋と似ていると書かれていました。(ポン・デュ・ガールの水道橋?)
ホテルとレストランを展開している、没落貴族の広大な屋敷を切り盛りする美しく賢い日本女性の存在は話としてでしょうが、このホテルは実際にあるようで・・・出来たら、是非とも泊まってみたい^^
それにしても・・・
個人的には松本清張の作品としては納得できないものと感じます。
美しい風景や情緒的な展開は、
多くの松本作品のように、心の奥に誰もが必ず持っている暗い部分をしっかり掴んだ不思議な納得に繋がる計算された筋立てが希薄に思われます。
by kosuzume2
| 2011-08-04 23:06
| 本