砂漠の船
篠田節子 : 著
双 葉 社 : 発行
篠田節子の作品は、
『仮想儀礼』を読んで他の作品も是非にと思いました。
http://kosuzume2.exblog.jp/9296541/
Uさんからの第3弾に2冊入っていた中の、1冊で
”これは、良いですよ”との添え書きに、大きな期待心。
確かに・・・切実な内容ですが・・・
共感と納得と反省が迫って、私も高配点つけます。
東京郊外(多摩?)ニュータウンの公団の賃貸2DKに住む家族は、夫婦と娘の3人。
主人公、幹郎は運輸会社の地域限定勤務員。早稲田大学卒。
妻、由美子はデパートのフルタイム勤務。早稲田大学卒。
服装の乱れもなく真面目に通学する娘の茜は、自分で描いたマンガを売る高校生。
田舎で、出稼ぎ家庭で・・・の貧しく寂しい子供時代を過ごした主人公は
いつも家族が一緒に暮らす生活に憧れて、単身赴任を断り地域限定勤務社員として家庭を大切に暮らし、
団地住民達との親睦も共同生活も文句なし。
”同じ場所で同じ仕事をして7年も8年もいてみろ。人間が腐って行くぞ”と大学の先輩・上司に言われ、
デパートという職場で重宝される、若くそれなりに華やかで高学歴の妻と、理解しようにも不明な娘の言動。
夫婦それぞれの心の迷いなど、少しづつ微妙にずれ始めて・・・
安泰に思えた家族が徐々に崩れていく様子がリアルに描かれています。
茜のかかわった、ホームレスの死を巡っての謎。
出稼ぎで東京に出ていた両親の過去を探って、見つけた事実。
昭和40年、東京オリンピック前後の田舎にあった差別や村八分という残酷な慣習。
たんたんと、主人公の毎日を描いてあるようですが、
いろいろな場面で頷いたり、驚いたり、疑問を感じたり、応援したくなったり・・・どこか身近な感情もあるようです。
自然な表現ながら、人を上手く書いているなぁ~~と好きな作家リストに入れます。
ただ、題名の意味がよくわかりません。
確か、『砂漠の船』って、ラクダの事だと思うのですが、内容とラクダの関係がわかりません。
砂漠の夜は寒く、冬には雪も降るとあるそうで・・・それと関係が有るのでしょうか?
by kosuzume2
| 2010-02-03 21:35
| 本